礼拝説教

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東京カルバリ教会説教 笠間良牧師 二〇二三年三月一九日 第二二八八号
「トライアル・アンド・エラー」使徒言行録九章二三節~二五節

 先週から屋内でのマスクの着脱は個人の判断に任せるようになりました。役員会でもそのことを話し合いまして、礼拝でも原則自由にしたいと思っています。礼拝での賛美歌も本日から立って歌うことといたしました。コロナ明けとはまでは言いませんが、やっと本格的な活動が再開できそうです。でも感染対策はなるだけ行うようにはしますので、しばらくはちょっと窮屈かも知れませんが、よろしくお願いいたします。
 先週東支区の総会に出かけましたが、やはりコロナ禍で全体的に教勢が落ちていることを痛感させられましたし、この三年ほど、積極的に伝道すると言いにくいところがありました。これまでも何もしてなかったと言うことはありません。皆さんも今見えているはずですが、カメラを用いてのネット配信とか、目立つように看板を作ったり、そして二月からはコーヒーサービスも行ったりしています。これが教会の周知に役立つことを願っています。私も平日に出来ることを考えていきたいと思っていますので、アイディアがありましたら、積極的にお教えください。
 これらは全て伝道につながることですが、実際やってみて成果が上がるかどうかを見ていかねばならないことです。本日の説教題は珍しい横文字で「トライアル・アンド・エラー」としました。これは「試行錯誤」を意味する言葉です。日本ではちょっと約されて「トライ・アンド・エラー」と言うことが多いようですね(1)。意味としては、試行錯誤を繰り返しつつ、成功を模索することです。これらを続ける事で教会を地域に根ざせるようにしていきたいと願っています。伝道とはイエス様を伝えること。そのための努力を続けていきましょう。
 本日の聖書箇所はサウロについてです。キリスト教の敵対者であったパウロが全く逆にキリスト教の伝道者になりました。変わり身の早さというよりは、真実に目覚めた人物の姿がここにはあります。
 先週の説教では、サウロは悩みの中で目覚め、そこからとても戦略的に伝道を行ったことでキリスト教を世界に広めることができたと言いました。彼の伝道がキリスト教を世界宗教に変えたのです。
 結果だけ見る限りパウロの伝道は大成功を収めましたが、彼の伝道が全て成功したという訳ではありません。数多くの失敗もありました。しかしその失敗から学ぶことで効率良く伝道の基礎を作って行ったというのが事実です。
 本日の聖書箇所を読んでみましても、やはりその試行錯誤が現れている部分だと分かります。最初の二三節に「かなりの日数がたって、ユダヤ人はサウロを殺そうとたくらんだが、」 とあります。そもそもダマスコ(2)にサウロがやってきたのはキリスト者を迫害するためだったのですが、ダマスコ入りしたら逆にキリスト教の伝道者となってしまったため、みんな戸惑い、やがてそれは殺意に変わっていきました。ユダヤ人にとって、サウロは裏切り者にしか見えなかったのです。
 彼らはサウロを殺そうとしましたが、サウロは彼らの考えに気づき、ダマスコにいるキリスト者たちの協力で逃げ出すことにしました。その方法は二五節に書かれています。即ち「そこで、サウロの弟子たちは、夜の間に彼を連れ出し、籠に乗せて町の城壁づたいにつり降ろした。」と書かれているとおりです。門を通ることが出来なかったので、町の城壁沿いにパウロを逃がしました。
 若干の説明が必要ですが、中東にある町は基本的に町全体を壁で囲んでいます。これは敵の攻撃から町を守るためですが、逆に兵の中の人を逃がさないようにするためでもあります。町に入る門は限られるので、そこで見張っていれば誰も外に出せないようにすることが出来ますし、捕まえる事も出来ます。そのためにこうせざるを得なかったということになります(3)
 殺されそうになっても伝道をするという姿勢は立派ですが、ユダヤ人に殺意を抱かせるほど憎まれたという事は、この町でのキリスト教のイメージを悪化させたことになりますので、ここでのサウロの伝道は失敗と言えるでしょう。
 ダマスコの町でサウロが行ったことは、先の二二節にあるように「イエスがメシアであることを論証し」たからです。サウロは正しいことを言いましたし、二五節に「サウロの弟子」という言葉もありますので、この町でサウロの言葉で弟子になった人も確かに存在したことが分かります。
 ここでサウロが行ったことは、ひたすらストレートにイエス様のことを伝える事でした。そのやり方は正しいですが、このやり方は進行の押しつけに近く、周囲のことを見ていないという問題がありました。日本風に言うなら、空気を読まずに伝道したということですね。
 信仰を持った際、良いことは何でも伝えたくなり、周囲の人たちに誰彼無くその事を伝えて、友人関係を壊してしまうと言うのは、信仰者にはよくあることで、私もそう言う経験を持ちます。そう言う場合、概ね失敗します。
 これが現代の日本であれば、それは単に人が近くにいなくなるだけで終わりますが、時代によっては、そう言った伝道は命の危険をも伴います。特に人々の感情というのを無視した伝道は、時に殺意まで抱かせてしまいます。それはサウロにとっても、キリスト教会にとってもマイナスでした。更にサウロはそこにいられなくなってしまい、逃げねばならないほどの状況になってしまったのですから、大失敗と言っても良いでしょう。
 しかし、この失敗はサウロにとってはむしろ励みになったものです。
 誰彼無くイエス様のことを伝えるのではなく、必要な人に伝えること。そして正しく伝える事の意味をここから学び取ります。本日の説教題「トライアル・アンド・エラー」とはまさにこのことで、まさに失敗は成功のもとです。それにダマスコもこの後少し時間がかかりましたが、キリスト教の都市へと変貌したとされます。決して無駄にはならなかったようです。
 キリスト教伝道者としてのパウロは、ずべて成功したわけではなく、むしろ失敗の方が多いくらいかも知れません。しかしその失敗の中で学び、どうイエス様を伝えていくかを知っていく事になります。
 失敗はしても、やるということが大切であると言うことはパウロからも学ぶことが出来ます。まずやってみましょう。
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