天地創造

製作年 1966年
製作 20世紀フォックス
監督 ジョン・ヒューストン
出演 アダム:マイケル・パークス
イヴ:ウラ・ベルグリット
カイン:リチャード・ハリス
ノア:ジョン・ヒューストン
ニムロド:スティーヴン・ボイド
アブラハム:ジョージ・C・スコット
サラ:エヴァ・ガードナー
天使:ピーター・オトゥール
 最初の物語を語るならば、この作品がぴったりでしょう。

 1966年に後悔されたこの作品は、旧約聖書の創世記前半部分を全て網羅するという、大変壮大なスペクタクルです。現代人の目から見ても派手な演出は全く古びません。

 監督はジョン・ヒューストン。1940年代から60年代にかけて長らくアメリカの娯楽作品を一手に引き受けた監督で、『マルタの鷹』(1941年。ハンフリー・ボガート出世作で、ハード・ボイルド映画の傑作と言われます)、『黄金』(1948年。人間の欲望と、むなしさを描いた作品で、監督のお父さんウォルター・ヒューストンがアカデミー助演男優賞を取ってます)、『アフリカの女王』(1951年。ハンフリー・ボガートの代表作の一つで、キャサリン・ヘプバーンとの名コンビぶりが有名となりました。ちなみにこの作品は非常に苦労したそうで、撮影風景は後にイーストウッド監督による『ホワイトハンター・ブラックハート』という映画にもなっています)、『赤い風車』(1952年。トゥルーズ・ロートレックを描いた伝記作品)、『白鯨』(1956年。ハーマン・メルヴィル原作を豪華な俳優陣によって作り上げたスペクタクル映画)、『黒船』(1958年。西部劇の名優ジョン・ウェインがタウンゼント・ハリスに扮した、江戸時代末期の日本を舞台にした作品)、『許されざる者』(1959年。オードリー・ヘプバーンがネイティブ・アメリカンの娘役を演じた、差別と戦う家族を描いた傑作です)、『荒馬と女』(1961年。マリリン・モンローの代表作)、『アニー』(1982年。傑作ミュージカルの映画化作品)、等々、古き良きハリウッドの時代を駆け抜けた監督でした。

 そんな娯楽映画の監督が聖書物語を監督するというので、当初反発も受けたようですが、これだけのスペクタクル作品をしっかり映画として完成できたのは監督の力量です。

 上映時間は長いですが、一つ一つのエピソードが聖書の入門編としても使えるため、DVDを常備している教会も多いかと思われます。


 創世記1:1 「初めに、神は天地を創造された。」

 映画は創世記の始まりと同じく「初めに、神は天地を創造された。」から始まります。
 何もなかった無の空間から、6日で神様が世界を作ったことをビジュアルとともに紹介されます。神様が手作りで世界を作ったことは描かれず、現在私たちが目にすることができる世界の神秘的な自然映像を挿入することで説明しています。
 ここで重要なのは6日目に神様は人を作られたと言うことと、7日目に休まれたという部分です。
 人が作られることによって、人と神様の関係が始まり、主役が神様の側から人間の側へと移っていきます。いわばここから映画が人間のドラマに変わりますと言うことを宣言しているかのようです。


 創世記2:18 「主なる神は言われた。「人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」 」

 最初に作られた人間は男一人だけでした。そこで神様はパートナーとなる女性を作り、二人に地上を任せることとします。これが有名なエデンの園ですが、この世界では動植物が放っておいても育つ特殊な空間として考えられていたようです。
 アダムとエバと呼ばれた二人は幸せに暮らしていましたが、ある日蛇の誘惑を受け、エデンの園の中央に生えていた善悪を知る木の実を食べてしまいます。
 これによって人は楽園を追われ、神様の恵みからも離れてしまい、自分たちの努力で食べ物を得なくてはならなくなりました。


 創世記4:8 「カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。」

 続いて初めての人殺しであるカインによる弟カイン殺しが展開します。神の恵みから切り離された人の罪はこれからも続いていきます。それが人間の営みとなります。
 ところで、カインとアベルの話は有名ですが、彼らは直接の人類の祖先ではありません。その後に生まれたセトこそがアダムとエバの血を人類に伝える存在となります。


 創世記6:9~ 「これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。」

 ここから少し長くノアの物語が始まります。
 ノアは旧約聖書の中でも有名な人物で、神様からの命令を与えられ、家族と世界中の動物を救うための箱舟を造ることとなる人物です。
 当時の人々は神様のことを忘れ、自分勝手に生きていたために、神様が怒りを発して世界を滅ぼそうとしましたが、全てを滅ぼすのではなく、再生を願い、ノアの家族たちを生かしたということになります。
 ここでの描かれ方は聖書に則ったもので、ちゃんとノアがその後にどうなったかも忠実に描いてます。

 他の映画の関連だと、箱舟は英語では「Ark」と言われ、様々な映画で名前が登場しますので、注意して見てみると面白いでしょう。又、神様と人との間の初めての契約のシーンが登場しますが、そこには虹が架かっています。虹が人間と神様との間の架け橋というイメージもいろいろな映画で登場しています。
 
 創世記11:9 「こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。」

 有名なバベルの塔の話となります。聖書に書かれているのは11:1~8という短いものですが、ここではかなり力が入った描写になっているのが特徴です。
 聖書に書かれていない部分として、バベルの塔を作ったのは一人の王の命令であることが挙げられます。この王の名前はニムロドと言い、創世記10:8-9に「クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムロドのようだ」という言い方がある。」と書かれている人物です。彼がバベルの塔を作ったとは聖書には書かれていませんが、ユダヤの伝承によればバベルの塔の建設の発案者とされています(王とはされていません)。この映画では、バベルの塔の完成近くになって、彼が天に矢を放ったことによって、神様が怒って言葉を混乱させられたことになっています。

 創世記22:2 神は命じられた。「あなたの息子、あなたの愛する独り子イサクを連れて、モリヤの地に行きなさい。わたしが命じる山の一つに登り、彼を焼き尽くす献げ物としてささげなさい。」

 本作品の最後はアブラハムの物語となります。アブラハムのエピソードはいくつもあるため、彼一人で映画にしても良いくらいですが、ここではアブラハムの前半生のエピソードはさらっと流し、クライマックスとして、愛する息子イサクを神様に献げようとするシーンに力を入れています。
 聖書においても有名なエピソードと言うだけでなく、父が息子を殺そうとするという恐ろしい物語です。
 これは神様がアブラハムの信仰を試すために行ったものという説明がされ、息子イサクは天使によって助けられ、一件落着です。
 でもこのエピソードは、愛する人を手にかけるような信仰があるのか?という議論は今でもあり、なかなか解釈が難しいところですね。
 でもそういう矛盾を考えさせるという姿勢は大切です。聖書の奥深さと言っても良いでしょうか。